じふのブログ

人は、語ることの出来ないものに対して沈黙しなければならない。

やってもいいけどやらない方が良いこと

 

あれは3ヶ月くらい前だったか。

月の初めの晴れた夜だったことは記憶している。

 

 

金曜日のバイト終わり、バイト先の友人(以下Aとする)と帰りがたまたま一緒になった。

話しているとお互いに明日の予定が無いということで、そういう気分だったのもあり「じゃあ明日2人で飲みにでも行こう」ということになった。

 

思い返せばこの会話が全ての元凶だったのだが。

 

 

 

そして翌日。地元の駅でAと集合して、いつも行く地元の居酒屋へ向かった。

 

 

満席だった。

 

気を取り直して別の店を何件か見に行くも、ことごとく満席だった。

 

 

私の地元は都会とはいかないまでも、駅周辺にはイイ感じの飲食店が軒を連ね、特急も止まる。そこそこ賑わっている。

おまけに給料日後の土曜日夜とあれば、予想できたはずの事態であった。

 

全ては予約もせず飲みに行こうとした私の浅はかさが招いた事である。

 

どうしたものか。もう居酒屋のアテは無い。

 

 

状況が変わったのは次の瞬間だった。

 

私が自らの浅慮を恥じながらグーグルマップで「居酒屋」と検索していると、

Aが突然「この時間に空いてる店って逆に美味しいんじゃない…?」とこぼしたのだ。

 

美味しい店は皆行くんだから客がいないってことは美味しくないんだよ。逆って何?

 

私が聞き返すと、

Aは「ガラガラの店はみんな敬遠するから、意外と開拓されていない名店もあるかもしれない」と続けた。

 

冷静に考えるとそんなはずは無いことは分かっている。

今では「ガラガラの店はひと通り開拓された結果ガラガラなんだよ」と反論することもできる。

 

しかしその時、彼の言葉に「救われた」と感じた自分がいたのも確かである。

(店を調べるのがめんどくさかったから。)

 

 

結局、なかなかそういう機会も無いから(便利な言葉ですね)と自分を納得させ、私は彼の提案に乗った。

 

適当に歩いて、最初に目についたガラガラの店に入ることにした。

 

とは言っても、ただ歩いているだけでガラガラの店なんて見つかるものだろうかと思っていたが、それは杞憂に終わった。

 

 ホルモン焼き屋。

道路に面したホルモン焼き屋なのだが、道路側がガラス張りになっており、客が一人もいない店内が丸見えになっている。

食べてるところも通行人から丸見えだ。いいぞ、これは入りたくない。

 

そういう趣旨なので躊躇なく入店する。

 

これはこの時発見したことなのだが、客のいない居酒屋ってめちゃめちゃ声が響く。

20席ほどで広くはない店内だったが、通常は騒がしいはずの居酒屋でこんなにも声が響くものなのか。

なんとなく私とAは声を潜めてしまう。

 そんなもの悲しさをかき消すように店内にはデカめの音量でテレビがつけられていたが、

バラエティ番組の笑い声がかえって店内の侘しさを際立たせているような気がした。

 

 

ここまでは料理以外の部分でマイナスの印象を受けていたので、まだ希望があった。

もしかすると本当に、ここがAが言っていたような隠れた名店なのかもしれない。

 

メニューにおすすめと書いてあるものを中心に2人で4~5品注文する。

 

しばらくして、注文したものが運ばれてきた。

 

 

 

 

 

結論から言えば、美味しくなかった。

 

厳密に言うと決してマズくはないのだが、情熱ホルモンの方が明らかに安くて美味い。ビールはちょっと薄かった。

 

別の店で飲み直そう、Aとアイコンタクトを取り、会計をする。

 

お酒も全然飲んでないのに一人3000円ぐらいして、首を捻りながら店を出た。

お通しがいくらだったのかは今となってはもう分からない。

 

後で調べてみると、

その店は食べログホットペッパーGoogle、全てのサイトでレビューが0件だった。

 

 

ひょっとしたら狐に化かされていたのかもしれない。