じふのブログ

人は、語ることの出来ないものに対して沈黙しなければならない。

【短編】怖い話

 

 

あのー、これは私が実際に体験した話なんですけど。

 

 

私の地元には、いわゆる「いわくつき」で有名なトンネルがあるんですね。

 

まあベタな話なんですけど、なんでもそのトンネルには幽霊が出るという噂があって、実際に異常な頻度で車の事故が起きていたそうです。

しかも事故を起こしたドライバーが皆、口を揃えて「幽霊を見た!」と言うらしいんです。

実際に私も昔そのトンネルで事故に遭いました。

 

これは、そのトンネルで私が経験した話です。

 

 

 

 

 

 

ある深夜のことです。

 

私が件のトンネルを歩いていると、向かい側から一人の若い女性が歩いてきました。

こんな時間に女性が一人で不用心だな、と思いましたが、特に気には留めませんでした。

 

その女性は薄暗いトンネルをこちらにまっすぐに歩いてくると、私の目の前でふと立ち止まりました。

不思議に思った私がつられて立ち止まるや否や、女性は突然この世のものとは思えない叫び声をあげ、そのまま何かに取り憑かれたように自身が来た方へと髪を振り乱しながら走って行きました。

 

私は状況が呑み込めず、その場に立ち尽くしただただ呆然とするしかありませんでした。

今思えば彼女は何かに取り憑かれていたのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

その事件から一週間が経った、ある深夜のことです。

 

 

私は先週と同様に、例のトンネルを歩いていました。

 

すると向かいからまた先週と同じように、人影がこちらに向かってくるのが見えました。

 

先週のことがあった私は「またあの女性かもしれない」と警戒しながら、注意深く近づいてくるものを見ました。

 

段々と近づいてはっきりとしてきたその人影は、袈裟のようなものを着た一人の老人でした。

 

 

「あ、これは駄目なやつだ」

 

直感的にその老人が良くないものだと悟った私は、その場から全速力で離れました。

 

 

それ以来、トンネルでその老人は見ていませんが、今でも深夜に近づいてくる人影を見るとあの時の恐怖が蘇ります。

 

 

 

それにしても本当に、あの時ばかりはとうとう成仏させられるかと思いました。